この記事の結論
自動巻き時計が止まったら、まず疑うのはぜんまいの巻き不足です。外して置いておくと止まるのは、自動巻きのしくみ上ふつうのことで、故障とはかぎりません。ロレックスやセイコーの取扱説明書でも、止まったときに最初にすることは「ぜんまいを巻くこと」と案内されています。手で十分に巻いても動かない、またはすぐ止まる場合は、故障の可能性があるので点検に出しましょう。
自動巻き時計が止まるしくみ(パワーリザーブ)
自動巻き時計は、ぜんまいにためた力がなくなると止まります。腕に着けているあいだは、腕の動きでぜんまいが自動で巻かれます。外して置いておくと、ぜんまいは巻かれずにほどけていき、ためた力がなくなった時点で止まります。
ぜんまいを十分に巻いた状態から止まるまでの時間を「パワーリザーブ(持続時間)」といいます。この時間はモデルによって違います。たとえばセイコーの取扱説明書では、次のように書かれています。
| モデル(キャリバー) | 十分に巻いた状態からの持続時間 | 出典 |
|---|---|---|
| セイコー 4R34 | 約41時間 | セイコー取扱説明書「製品仕様」 |
| セイコー 8R46・8R48 | 約45時間(クロノグラフを使い続けると短くなる) | セイコー取扱説明書「ぜんまいの巻きかた」 |
| セイコー 6R51・6R55 など | 約72時間 | セイコー取扱説明書「ぜんまいの巻きかた」 |
同じメーカーでも、モデルによって持続時間がこれだけ違います。お手持ちの時計の時間は、取扱説明書の「製品仕様」などで確認してください。
着けているのに止まる場合も、巻き不足のことがあります。セイコーは、巻き上げ量が足りないと進み・遅れの原因になるため、1日10時間以上着けることをすすめています。着ける時間が短い日や、デスクワークなどで腕をあまり動かさない日は、ぜんまいが十分に巻かれないことがあります。
まず試すこと:手でぜんまいを巻く
止まった時計は、まずリューズを回して手でぜんまいを巻いてみてください。手順は次のとおりです。
- ねじ込み式のリューズなら、まず緩める
ロレックスのオイスター ケースのモデルなどが採用している「ねじ込み式」のリューズは、反時計回りに回して緩めてから操作します。緩めずに無理に回さないでください。 - 決められた向きに、ゆっくり回して巻く
ロレックスの取扱説明書では、緩めたリューズを時計回りに回すと巻けて、逆に回しても巻けないとされています。セイコーの取扱説明書でも、巻ける向きは右回りで、左に回すと空回りすると書かれています。 - 十分に巻く
巻く回数の目安もモデルで違います。ロレックス(オイスター パーペチュアル、サブマリーナーの取扱説明書)は、止まったときは少なくとも25回転以上。セイコー 4R34 の取扱説明書では、止まった状態から使うときは20回くらい巻くとされています。 - 巻いてから時刻を合わせる
セイコーは、止まっている時計は十分に巻いてから日付と時刻を合わせるよう案内しています。 - ねじ込み式のリューズは、最後に必ず閉める
ロレックスは、リューズの操作後は必ず十分にねじ込んで元に戻すよう案内しています。閉め方が分からない・根元まで閉まらないときは、こちらを見てください。
→ ロレックスのリューズが閉まらないときの対処
巻いてもすぐに動き出さないことがある
セイコーの取扱説明書では、ぜんまいがほどけて止まった状態からは、巻き始めの力(トルク)が弱いため、巻いてもすぐには動き出さないと説明しています。時計を軽く振ると、てんぷが回って早く動き出すとも書かれています。巻き始めてすぐに秒針が動かなくても、すぐに故障とは決めず、もう少し巻いてようすを見てください。
※落としたりぶつけたりした後の時計は、振らずに点検に出してください。
→ 時計を落として動かなくなったときの対処
巻きすぎて壊れない?
セイコーの取扱説明書では、ぜんまいはいっぱいまで巻くと滑るしくみになっていて、ぜんまいが切れる心配はないとされています。ほかのメーカーのしくみは、それぞれの取扱説明書で確認してください。
巻き不足か故障かの見分け方
「手で十分に巻いたら動くか」と「どのくらいで止まるか」で見分けます。下の表の上から順に当てはめてください。
| 今の状態 | 考えられること | 次にすること |
|---|---|---|
| 外して置いていたら止まった。手で巻けば動き、着けているあいだは止まらない | 巻き不足。自動巻きのしくみ上ふつうのことで、故障とはかぎらない | 時刻を合わせて、そのまま使う |
| 巻き始めてすぐは秒針が動かない | 巻き始めは力が弱く、すぐには動かないことがある(セイコーの説明) | もう少し巻いて、ようすを見る |
| 毎日着けているのに止まる | 着ける時間が短い・腕の動きが少なく、巻き不足になっている可能性 | 朝に手で巻いてから着けて、ようすを見る。それでも止まるなら点検 |
| 十分に手で巻いたのに、取扱説明書の持続時間より明らかに早く止まる | 故障の可能性(油の劣化・部品の摩耗など) | 点検に出す |
| 手で巻いても、まったく動かない | 故障の可能性 | 点検に出す |
| リューズを回しても巻いている手応えがない | 回す向きが逆(空回りする向き)か、ねじ込み式を緩めていない可能性。正しく操作しても手応えがないなら、巻き上げのしくみの不具合の可能性 | 向きと緩め方を確かめる。それでもだめなら点検 |
| 止まる前に、遅れるようになっていた | 巻き不足でも進み・遅れは出る(セイコーの説明)。十分に巻いても遅れるなら、磁気や点検不足の可能性 | 十分に巻いて精度を見る。戻らなければ点検 |
故障の場合に考えられる原因
十分に巻いても止まる場合、原因は時計を開けて調べないと分かりません。最終的な判断は修理店の診断になります。考えられるものを、メーカーの説明とあわせて挙げます。
- 潤滑油の劣化
ロレックスの取扱説明書では、ムーブメントに使う潤滑油の特性は、ふつう時間がたつと劣化し、精度に影響する可能性があると説明しています。そのため定期的なオーバーホールをすすめています。
→ オーバーホールの頻度と、点検に出すサイン - 部品の摩耗
長く使うと、歯車や巻き上げのしくみの部品がすり減ることがあります。どの部品がどの程度すり減っているかは、分解して点検しないと分かりません。 - 磁気
セイコーは、機械式時計が強い磁気を受けると精度がずれることがあり、部品が磁気を帯びた場合は磁気を抜く修理が必要としています。急に進む・遅れるようになった後で止まった場合は、磁気の可能性も考えてください。
→ 時計が急に進む原因と、磁気帯びの見分け方 - 落下・強い衝撃
セイコーは、落下や強い衝撃、激しい運動なども精度が変わる原因に挙げています。落とした後から止まった場合は、振ったりリューズを強く回したりせず、点検に出してください。
→ 時計を落として動かなくなったときの対処 - 水が入った
セイコーは、ガラスのくもりが消えない場合は、パッキンの劣化などで時計の中に水が入ったことが原因として、購入店への相談をすすめています。
→ 時計のパッキン交換の費用と交換のタイミング
オーバーホールの目安
オーバーホールの間隔は、メーカーやモデル、使い方によって違います。セイコーのスプリングドライブ(キャリバー5R65・5R66)の取扱説明書では、3年を超えて分解掃除による点検調整をしていないことを、進み・遅れの原因のひとつに挙げています。まずはお手持ちの時計の取扱説明書や保証書で、メーカーの目安を確認してください。ブランド別の目安と、点検に出すサインはこちらにまとめています。
→ オーバーホールの頻度と、点検に出すサイン
→ 初めてオーバーホールに出すときの流れ
ブランド別「止まった」ときの記事
ブランドが分かっている方は、ブランドごとの記事も参考にしてください。モデルに多い症状や、確認のしかたを詳しく書いています。
| ブランド | 主なモデル | 記事 |
|---|---|---|
| ロレックス | デイトジャスト、サブマリーナーなど | ロレックスが止まる・遅れるときの原因と対処 |
| オーデマ ピゲ | ロイヤル オーク | オーデマ ピゲ ロイヤル オークが止まったときの記事 |
修理店の選び方を全体で比べたい方は、こちらをご覧ください。
→ オーバーホールの依頼先の総合比較
よくある質問
Q. 毎日着けているのに止まるのは故障ですか?
A. 故障とはかぎりません。着ける時間が短い日や、腕をあまり動かさない日は、ぜんまいが十分に巻かれないことがあります(セイコーは1日10時間以上の着用をすすめています)。朝に手で十分に巻いてから着けても止まるなら、点検に出しましょう。
Q. ワインディングマシーンは必要ですか?
A. 今回確認した取扱説明書では、ワインディングマシーンを使うべきかどうかの記載は見つかりませんでした(不明)。セイコーは、腕に着けない場合は毎日決まった時刻にリューズを回して十分に巻くよう案内しています。使うかどうか迷う場合は、メーカーや購入店に確認してください。
Q. 止まったまま放っておいても大丈夫ですか?
A. 止まったまま置いておくこと自体で壊れるかどうかは、今回確認した公式情報には書かれていませんでした(不明)。ただしロレックスは、潤滑油は時間がたつと劣化すると説明しています。使っていない時計でも、最後のオーバーホールから長くたっている場合は、点検を検討してください。
Q. 巻きすぎると壊れますか?
A. セイコーの取扱説明書では、いっぱいまで巻くとぜんまいが滑るしくみなので、切れる心配はないとされています。ほかのメーカーは取扱説明書で確認してください。どのメーカーでも、ねじ込み式のリューズを緩めずに無理に回すのは避けましょう。
Q. 手で巻くとき、何回巻けばいいですか?
A. モデルによって違います。ロレックスは止まったときに少なくとも25回転以上、セイコー 4R34 は止まった状態から使うときに20回くらいと案内しています。お手持ちの時計の取扱説明書で確認してください。
巻いても動かない・すぐ止まる場合
十分に手で巻いても動かない、またはすぐに止まる場合は、オーバーホール(分解掃除)を含めた点検の見積もりを取りましょう。見積もりは、下の4社とも無料です。並びは、ブランドを問わずに比べたオーバーホールの依頼先の総合比較と同じです。
| 順位 | 会社 | 公式で確認できたこと |
|---|---|---|
| 1 | WATCH COMPANY | オーバーホール 22,000円〜(税込)。ロレックスの自動巻き3針は2〜3週間が公式の目安(受付状況により延びることがある)。セイコー・シチズンなど国産は預かり対象外 |
| 2 | CIEN(シエン) | オーバーホール 22,000円〜(税込)。保証は修理完了日から1年(アンティーク等は6か月)。現在は修理・オーバーホールに約6週間〜と公式で告知 |
| 3 | 時計修理工房なんぼや | Web(宅配)で見積もりを申し込める。見積もり提示の時点でキャンセルすれば、返送料は会社負担。オーバーホールは2〜4週間が目安 |
| 4 | オロロジャイオ | 自動巻きのオーバーホール 19,800円〜(税込)。当サイトでオロロジャイオを案内しているのは、ロレックス・オメガなど22ブランドの時計。納期は自動巻きで5〜6週間前後 |
- WATCH COMPANY と CIEN は、修理代が1万円未満のときは、時計を返すときの送料が自己負担です。
- 対応しているブランドは会社ごとに違います。お手持ちの時計のブランドが各社の公式の一覧に載っているか、申し込む前に確かめてください。
現行の国産の時計(セイコー・シチズンなど)を公式の取扱ブランドに載せているのは、この4社のうち時計修理工房なんぼやだけです(2026年11月6日確認)。
(確認日:2026年11月6日。料金・納期・保証は各社の公式サイトで確認しました。変わることがあるため、申し込む前に各社の公式サイトでご確認ください)
確認日:2026年11月5日。止まったときの対処は、各メーカーの取扱説明書で確認しました。
