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時計が急に進む原因は?磁気帯びの見分け方と、自分でできる確認・やってはいけないこと

木のテーブルに置かれた革ベルトの機械式腕時計 修理工房

結論

腕時計が急に進むようになったとき、最初に確かめやすい原因は磁気です。セイコーは、機械式時計が磁気を受けると、てんぷの「ひげぜんまい」が影響を受けて進みや遅れが出ると説明しています。

まずは時計を磁気が出る製品から離し、時刻を合わせ直して数日ようすを見てください。それでも精度が戻らないときは、メーカーの案内では「脱磁(磁気を抜く作業)と内装修理」が必要になります。修理店に相談しましょう。

なお、進みや遅れの原因は磁気だけではありません。温度、衝撃、長いあいだ点検していないことも、メーカーが原因として挙げています。

1. 症状:こんな「進み」は要チェック

  • 昨日までは問題なかったのに、急に1日で大きく進むようになった
  • スマートフォンやタブレットの近くに置いた後から、時間がずれるようになった
  • 時刻を合わせ直しても、すぐにまた進む

機械式時計の精度は、毎日少しずつ変わるのがふつうです。グランドセイコーは、着けている時間やぜんまいの巻き上げ量、温度、時計の向き(姿勢)などで精度が変わると説明しています。そのため、良し悪しは1日だけでは決めず、1週間〜10日ほどの平均で判断するよう案内しています。

「1日だけ少し進んだ」なら、故障とはかぎりません。「急に、続けて、大きく進む」なら、次の原因を確かめましょう。

2. 考えられる原因

原因1:磁気(磁気帯び)

磁気の影響は、時計の動く仕組み(駆動方式)によって出方が違います。セイコーの公式情報では、次のように整理されています。

駆動方式 磁気による症状 影響を受ける部品
機械式(メカニカル) 直流・交流どちらの磁気でも、進みや遅れが出る てんぷのひげぜんまい
スプリングドライブ 直流の磁気で遅れ、交流の磁気で進むことがある 磁気ブレーキ
アナログクオーツ 直流の磁気で止まり、交流の磁気で針が回り続けることがある ステップモーター
デジタルクオーツ 磁気の影響を受ける部品がない ―

また、アナログクオーツ時計とスプリングドライブでは、ごくまれに、非常に強い磁気で内部の歯車(番車)どうしがくっつき、止まってしまうことがあるとされています。この場合も脱磁が必要なので、修理に出すよう案内されています。

身の回りの「磁気が出るもの」の例(セイコー キャリバー4R34の取扱説明書の例)

  • スマートフォン、携帯電話、タブレット(スピーカー部分やカバーのマグネット)
  • ACアダプター
  • 磁石の留め具が付いたバッグ
  • 交流式の電気シェーバー
  • 電磁調理器(IH)
  • 携帯ラジオ(スピーカー部分)
  • 磁気ネックレス、磁気健康枕

セイコーは、時計を磁気製品から5〜10cm以上離せば、ほとんど影響を受けなくなると説明しています。どのくらい離せばよいかは、時計の耐磁性能(裏ぶたの表示)によって変わります。お手持ちの時計の取扱説明書を確認してください。

例えばセイコーのキャリバー4R34の取扱説明書では、裏ぶたに耐磁表示がない時計は磁気製品から5cm以上、耐磁表示(JIS1種)がある時計は1cm以上離す必要があるとしています。

原因2:暑いところ・寒いところに長く置いた

セイコーやグランドセイコーの取扱説明書では、暑い場所や寒い場所に長く置くと、一時的に進んだり遅れたりすることがあるとしています。常温に戻せば元の精度に戻るとされています。

例として、スプリングドライブのグランドセイコー(キャリバー9RB2)とセイコー(キャリバー5R65・5R66)の取扱説明書では、気温5℃〜35℃で腕に着けたときに安定した精度が出るよう調整してある、と書かれています。

グランドセイコーの説明では、機械式時計は一般に、高温では遅れがちに、低温では進みがちになります。

原因3:落とした・強くぶつけた・激しい運動をした

強い振動を受けたことも、進み・遅れの原因に挙げられています。時刻を合わせ直しても精度が戻らない場合は、お買い上げ店へ相談するよう案内されています。

原因4:長いあいだオーバーホールをしていない

セイコーのスプリングドライブ(キャリバー5R65・5R66)の取扱説明書では、「3年を超える長期間、分解掃除による点検調整を行っていない」ことも、進み・遅れの原因に挙げられています。点検の目安はメーカーやモデルで違うので、お手持ちの取扱説明書で確認してください。

→ オーバーホールの頻度と、点検に出すサイン

原因5:使い方による日々の変化(故障ではない)

上で書いたとおり、着けている時間やぜんまいの巻き上げ量、温度、時計の向きによって、機械式時計の精度は毎日変わります。グランドセイコーは、ぜんまいが十分に巻き上がった状態で使うと精度が安定しやすいとしています。

3. 自分でできる確認

  1. 磁気が出るものから離す
    スマホ、タブレット、バッグの留め具などから離して保管します。寝るときに枕元でスマホと並べて置いている場合は、置き場所を変えてみましょう。
  2. 時刻を合わせ直す
    磁気が原因なら、磁気のもとから離せば元の精度に戻るとメーカーは説明しています。合わせ直したら、ずれ方を見ます。
  3. 数日〜1週間、ずれを記録する
    毎日同じ時間に、時報などと比べて何秒ずれたかをメモします。メーカーの案内どおり、1日だけでなく平均で判断しましょう。
  4. ここ最近の出来事を思い出す
    暑い車内に置いた、落とした、スポーツをした、などに心当たりがないか確かめます。

4. やってはいけないこと

  • 方位磁石(コンパス)で磁気帯びを判断する
    セイコーは、方位磁石は地球の弱い磁気に反応するため、時計の磁気帯びの検査には向かないと説明しています。磁気を帯びていない時計でも、ステンレスの外装やバンドの加工のしかたによっては方位磁石の針が振れることがあるそうです。正しく調べるには専用の測定器が必要です。
  • 自分で裏ぶたを開ける
    ひげぜんまいは、とても細くて繊細な部品です。開けると防水性が損なわれるおそれもあります。中の点検は専門の技術者に任せましょう。
  • スマホやバッグの留め具の近くに置き続ける
    原因を取り除かないまま時刻だけを合わせ直しても、またずれる可能性があります。

※市販の脱磁器(消磁器)を自分で使う方法については、今回確認したメーカーの取扱説明書では案内が見つかりませんでした。メーカーは「脱磁」を修理として案内しています。

5. 専門店に相談する目安

次のどれかに当てはまったら、修理店やメーカーのサービス窓口に相談しましょう。

  • 磁気のもとから離し、時刻を合わせ直しても、精度が戻らない
  • 数日〜1週間記録した平均のずれが、取扱説明書にある精度の目安を超えている
  • 落とした・ぶつけた後から、進み・遅れが直らない
  • 磁気のもとから離しても止まったまま動かない
  • 最後のオーバーホールから長い期間がたっている(セイコーのスプリングドライブの例では3年超)

なお、セイコーのキャリバー4R34の取扱説明書では、磁気を帯びたことが原因で精度の目安を超えた場合、磁気の除去と精度の再調整は保証期間にかかわらず有料とされています。ほかのメーカーの扱いは、それぞれの保証書や取扱説明書で確認してください。

→ 初めてオーバーホールに出すときの流れ

まとめ

  • 急に進むようになったら、まず磁気を確かめる。スマホやバッグの留め具から5〜10cm以上離すのが目安
  • 機械式は、ひげぜんまいが磁気を受けると進み・遅れが出る
  • 温度・衝撃・点検不足も原因になる
  • 離して合わせ直しても戻らなければ、脱磁と点検が必要。専門店に相談する

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確認日:2026年11月3日。各メーカーの取扱説明書・公式サイトで確認しました。

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